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宮崎アニメの「となりのトトロ」。幼い姉妹サツキとメイ は、森に住むオバケ「トトロ」と出会うことができる 子どもには見えて大人には見えない世界。これとは逆に大 人にしか見えない世界の一つが、「此処彼処」で著者が描 く、場所にまつわる思い出だ。10代や20代では、場所 を振り返ることで思い出が甦ることなんてなかった 川上さんは1958年生まれ、このくらいになるとそんな 場所がやたらふえていく。何気ない「此処」が忘れがたい 思い出を甦らせる。平凡な「彼処」が、とても大切だった りする ☆ ☆ ☆ 1月から順に12月まで、時の流れに従って著者の此処彼 処にまつわる思い出が綴られる。人にはそれぞれ過去に閉 じ込めた世界がある。場所をきっかけに過去が甦る。そう した著者自身の過去の世界が独自の筆さばきで描かれる 幼いときに住んでいたところ、学校、遠い親戚の家、行き たくなかった病院、裸足で走った夜の町、田舎の実家、映 画館、喧嘩して雨に打たれた橋、足しげく通った居酒屋、 旅先で偶然訪れた場所 ・・・ 「空気感」のある作品と言われる著者の感覚が際立ってい る。エッセイのなかで、小説の嬉しさとは、面白い、楽し いだけではなく、怖いだの、気分が悪いだの、むずむずす るだのという妙な感じも全部含めたうえでの「嬉しさ」だ と思う、と書いている ☆ ☆ ☆ 著者は、空港には独自の匂いがあるという。銀座には怖い 一画があるといい、豆にかんしてはひどく保守的だ。近道 でもないのに、抜け道を選んで車を走らせ、丸の内線に荻 窪から乗って思い切り淋しさに浸る 高所恐怖症なのに東京タワーに行く、蛇腹式のエレベータ に乗りたいから高島屋に出かける。空腹になると心が凶悪 になるそうだ。島への旅は「ものなつかしいところへの回 帰なのである」といい、水を見たいと思って湖に行く、 「海には行かない、海は強いから」 夜の電話ボックス、悲しい電話。傷つけて、傷つけられて。 失ってあきらめきれなくて。悄然とたたずんでいたら猫が 肩に乗ってきた。「ああ、終わったんだ。猫に乗られなが ら、そう思った」。著者のそばにも「トトロ」がいる 此処 彼処 (ここ かしこ) ================================ OFFICE JUST EYE : 梶 川 和 重 ================================
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