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help リーダーに追加 RSS ブックレビュー 「此処彼処」 (川上弘美・著)

<<   作成日時 : 2006/11/10 13:50   >>

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     宮崎アニメの「となりのトトロ」。幼い姉妹サツキとメイ

     は、森に住むオバケ「トトロ」と出会うことができる


     子どもには見えて大人には見えない世界。これとは逆に大

     人にしか見えない世界の一つが、「此処彼処」で著者が描

     く、場所にまつわる思い出だ。10代や20代では、場所

     を振り返ることで思い出が甦ることなんてなかった


     川上さんは1958年生まれ、このくらいになるとそんな

     場所がやたらふえていく。何気ない「此処」が忘れがたい

     思い出を甦らせる。平凡な「彼処」が、とても大切だった

     りする


              ☆     ☆     ☆


     1月から順に12月まで、時の流れに従って著者の此処彼

     処にまつわる思い出が綴られる。人にはそれぞれ過去に閉

     じ込めた世界がある。場所をきっかけに過去が甦る。そう

     した著者自身の過去の世界が独自の筆さばきで描かれる


     幼いときに住んでいたところ、学校、遠い親戚の家、行き

     たくなかった病院、裸足で走った夜の町、田舎の実家、映

     画館、喧嘩して雨に打たれた橋、足しげく通った居酒屋、

     旅先で偶然訪れた場所 ・・・


     「空気感」のある作品と言われる著者の感覚が際立ってい

     る。エッセイのなかで、小説の嬉しさとは、面白い、楽し

     いだけではなく、怖いだの、気分が悪いだの、むずむずす

     るだのという妙な感じも全部含めたうえでの「嬉しさ」だ

     と思う、と書いている


              ☆     ☆     ☆


     著者は、空港には独自の匂いがあるという。銀座には怖い

     一画があるといい、豆にかんしてはひどく保守的だ。近道

     でもないのに、抜け道を選んで車を走らせ、丸の内線に荻

     窪から乗って思い切り淋しさに浸る


     高所恐怖症なのに東京タワーに行く、蛇腹式のエレベータ

     に乗りたいから高島屋に出かける。空腹になると心が凶悪

     になるそうだ。島への旅は「ものなつかしいところへの回

     帰なのである」といい、水を見たいと思って湖に行く、

     「海には行かない、海は強いから」


     夜の電話ボックス、悲しい電話。傷つけて、傷つけられて。

     失ってあきらめきれなくて。悄然とたたずんでいたら猫が

     肩に乗ってきた。「ああ、終わったんだ。猫に乗られなが

     ら、そう思った」。著者のそばにも「トトロ」がいる


     此処 彼処 (ここ かしこ)



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      OFFICE JUST EYE : 梶 川 和 重
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