日本の家紋と西洋の紋章
スポーツの個人競技と団体競技の違いはユニフォーム着用の有無にある。団体競技では選手たちはお揃いユニフォームを着る。チームとしての一体感を高めるためと、競技中に敵・味方を峻別するためだ。このユニフォームと同じ役割を果たすのが 家紋 だ。同じ家紋を使う者同士は、同じ一族であることを示す 家紋が使われだしたのは平安時代の後期とされ、貴族たちが乗った牛車の模様や衣装の柄が家紋に転じた。鎌倉時代から室町時代にかけ武士階層が台頭すると、戦場で敵と味方を見分けるために用いられ、広く普及し始める 戦乱の世が治まった江戸時代になると、家紋は儀式・儀礼用に用いられ、武士だけでなく、商人・庶民たちの間でも使われ隆盛を極める。だが、戦後に家制度が廃止されたため、家紋は私たちの暮らしから縁遠い存在になっている 日本の家紋と同じ機能を持つのがヨーロッパ社会の 紋章 だ。紋章が使用され始めたのは11世紀初頭のドイツと言われ、日本と同様、戦場で騎士個人を識別するために用いられた 紋章の中心部は「盾」(エスカッシャン)で、デザインはよく見るアイロン型を中心に、国や地方によって数多くの種類がある。使われる色は①金属色としては金色と銀色の2色、②原色が赤、青、黒、緑、紫、橙の6色、③毛皮模様が 「白てん」 を模した 「アーミン」 と、リスから借用した 「ヴェア」 の2つに別れ、それぞれがさらに多くのバリエーションをもつ。そして、盾には 「チャージ」 とよばれる動植物の図案が配置されたり、「オーディナリ」 という幾何学模様が描かれることもある 紋章は領土の拡大や婚姻などにより、2つ以上の家同士が一緒になり、一つの紋章になることもある。こうした場合、盾には2つ以上の家の紋章を組み合わせる 「マーシャリング」 が行われる。イギリス王家の紋章は4つに分割され、それぞれ、イングランド、スコットランド、アイルランドの王家を表すチャージが配置されている。分割された場所には優先順位が決められており、2分割の場合は、向かって左側が上位の位置となる。4分割の場合は、順位は高い順に左上→右上→左下→右下になる |

イギリス王室の紋章
紋章には 「盾」 を飾るデコレーション部もある。盾の左右には 「サポーター」 とよばれる動物や架空の生物、自然をモチーフにした図案が配置される。このサポーターにも左右の優先順位が決まっており、向かって左側の 「デキスター」 が上位になる。イギリス王家のサポーターは左側にイングランドの象徴であるライオンが置かれ、右側の 「シニスター」 にはスコットランドの象徴であるユニコーン(一角獣)が配置されている。よく観るとこのユニコーンは鎖でつながれている。スコットランドはイギリスに縛り付けられていることを示唆し、イギリスにおけるスコットランドの立場を微妙に表現している。今年(2014年)9月にはスコットランドでイギリスからの分離独立を問う住民投票が行われる 盾の上部には、王冠、ヘルメット、クレスト(兜飾り)が配置される。王冠やヘルメットは騎士の身分や階級によって使用する色や柄、デザインが決まっている。そして、盾の周囲の 「モットー」 とよばれる巻物や土台部分の 「コンパートメント」 には、家訓や教訓、信条などが表現される |

紋章は戦場で使用されたため、家に女性しかいない場合には女性専用の紋章が作られることもあった。女性専用の紋章では盾のデザインが菱形・ダイヤ型になっている。実は日本の家紋にも女性専用の紋として、女紋 がある。これは主に京阪神から瀬戸内地方に見られる風習で、母親から娘→孫娘といったように女系間で伝承されてゆく。時には姑から嫁へと受け継がれることもある。デザインは家紋をアレンジしたものが多く、丸味を帯びた華やかな意匠が特徴だ 女紋は女性が自分の持ち物に入れることで財産権を主張するためにも利用された。江戸期には夫が妻の財産権を侵害した場合は、妻は離縁を請求できたという。現在も大半の家庭でサイフのヒモを握っているのは女性で、妻の財布は 「女紋」 の象徴と言えるかもしれない |
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