『羽』  ソーア・ハンソン 著

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 「羽」







古今東西、スーパーマンや鉄腕アトムのように多くのヒーローたちは空を飛ぶ。人間にとって自分の力で自由に空を飛ぶことは憧れなのだろう。そんな憧れを可能にしているのが鳥たちであり、羽という存在だ



羽は、風切羽、正羽、綿羽、剛毛羽などさまざまな形態があり、鳥だけなく人間にも多様な用途をもたらす。本書は保全生物学者の著者による羽についての探求の物語であり、羽にまつわる研究、歴史、自己流の実験、さまざまな人や会社への取材、羽と人間との関わりの考察などから構成されている



著者の探索は羽の進化から始まる。ここで著者は羽の進化についての研究の第一人者、リチャード・プラム博士の元を訪ねる。プラム博士は鳥の羽が生え揃う仕組みの解明や羽の進化の研究から、羽は鳥が飛行するため進化したのではなく、新規性の発現が生じ、羽が生まれたことを唱えている。博士の研究は鳥類は恐竜の獣脚類から進化したものであることの証明にも繋がっている



次なる探索は羽の断熱作用を巡るものだ。羽の持つ保温機能の高さは人間も羽毛布団やダウンジャケットなどで利用している。著者は羽の持つ断熱作用の仕組みを探ると同時に、なぜ、鳥は保温性の高い羽を身にまといながら、夏でも平気で過ごせるのか、という鳥の暑さ対策にも迫る



そして、飛行を巡っては鳥が空を飛ぶように進化した端緒を巡って対立する2つの説、地上起源説と樹上起源説が紹介される。また、鳥が空を飛ぶ際の羽の働きを解明する。ここで著者はスカイダイバーのケン・フランクリンを訪ねる。彼はハヤブサと一緒にスカイダイビングをし、ハヤブサが急降下する際の羽の動きを最も身近で観察している人物だ。ハヤブサ以外にも鳥がスピードや方向を変化、調整する仕組みが解き明かされる。鳥の飛行に憧れ空を飛ぶことに挑戦した人間たちの話も収録されている




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人間が羽を利用した装飾の話もある。第一次大戦前、羽は女性の帽子を飾るために欠かせないファッション・アイテムになる。羽産業は空前のブームに成長し、羽バブルが発生する。一攫千金を夢みる人間は高値の羽を手に入れるため、アフリカに生息するバーバリダチョウの捜索と捕獲に向かう。だが、おきまりのようにバブルは崩壊する



人間は現在も羽の装飾に魅せられている。舞台やショーでは俳優たちは羽を使った豪華な衣装を身にまとう。著者はラスベガスのショーで使われる衣装の羽を染色する会社、レインボー・フェザー・カンパニーを訪れ、ジョディ・ファヴァッゾに羽の染色について話を聴く



最後の探索は、羽の機能を巡るものだ。鳥にとっての羽の機能としては撥水性がある。鳥の羽が水を弾く仕組みは羽の構造にあることが明らかにされる。そして、人間は羽の機能を利用し羽ペンを作り出した。著者は羽の機能を探りながら一つの疑問に遭遇する。これから先、羽の機能は一体どう進化するのか、羽はどこへ向かうのか ・・・



疑問を携え著者は、キンバリー・ボストウィック博士の元を訪れる。博士はコーネル大学で、キガタヒメマイコドリが羽を使って不思議な音を鳴らす仕組みの研究に取り組んでいる。博士の研究成果を聞きながら、著者は疑問に対する答えを得る。それは、現代のような文化は結果にこだわり、答えを求めることに目を奪われがちだが、人が惹きつけられる真の魅力は、新しい知見が蓄積されるごとに増してゆく。そして、科学で重要なのは答えを出すことではなく、問いかけをすることであると




「羽」 ソーア・ハンソン 著
白揚社 定価2600円(税別)








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