身だしなみの許容範囲


中途採用の面接には思わぬ格好でお出でになる方がいる。長髪、金髪、ピアス、ヒゲ、下駄 ・・・。大半の企業ではこうした人たちには丁重に応対し、お引取りを願う。このように応募者を外見だけで判断し、差別的な取り扱いをして問題はないのだろうか



労働基準法は国籍、信条、社会的身分を理由として賃金、労働時間、その他の労働条件について差別的な取り扱いを禁止している(第3条)。だが、これはあくまで採用してからの話である



最高裁は身上書に学生運動に関与したことを記載せず、面接時にも虚偽の回答をしたとして試用期間満了直前に新卒者の本採用を拒否して争いとなった 三菱樹脂事件 において、労働基準法第3条は雇い入れ後の労働条件についての制限であって、雇い入れそのものを制限する規定ではないとしている



採用に関しては男女雇用機会均等法が募集や採用について性別に関わらず均等な機会を与えることを規定しているだけである(第5条)




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一方、採用後や試用期間満了後に奇抜な身なりで出社してくる人もいる。こうした場合は就業規則の服務規程やガイドラインに照らして注意を促し、聞き入れない場合は懲戒の対象となる。だが、客観的で合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる(労働契約法第15条)



容姿・ファッションを巡る裁判例としては イースタン・エアポートモータース事件 がある。これは全日空のパイロットを送迎するハイヤー会社のドライバーが口髭をたくわえたところ会社側が「乗務員勤務要領」 に基づいて再三、髭を剃るよう注意、指導した。しかし従業員が従わなかったためハイヤーへの乗務を禁止する業務命令を出したため、従業員が受け取れなくなった各種の手当てを求め裁判となった



東京地裁は企業が経営上の必要から容姿、口髭、服装、頭髪等について合理的な規律を定めた場合、これは労働条件の一つとなり、従業員はこれに従った労働提供の義務を負うとしたものの、同社の乗務員勤務要領におけるヒゲを剃ることという規定は顧客に不快感を与える無精ヒゲや異様、奇異なヒゲを指しているものと解釈することが相当であるとし、従業員側の主張を認めた



ところで、会社側が乗務禁止という業務命令の根拠とした乗務員勤務要領は総務部が作成したハイヤー運運転手の教育・養成を目的とした40ページほどの小冊子で、ハイヤー運転手として勤務する上で心得ておかなければならないサービス要領の基本が具体的に詳しく記載されていた



東京地裁は、この乗務員勤務要領には就業規則に根拠を置くことの旨の箇条はなく、形式・内容等も規則としての形式を欠き、改廃についても特段の手続きを経ず適時なされ、従業員側との協議や合意がなされたとは言えないとし、乗務員勤務要綱は業務命令を発する規則・諸規定と解することは困難であるとしている



懲戒処分は使用者の経営権に基づく固有の権利であるという説と、労使間の個別契約意思によるものという説があり、近年は後者の説が有力となっている。このため、就業規則に懲戒の種類と程度、事由(理由)を明示し、それを従業員に周知させておくことが求められる(罪刑法定主義)。服装のガイドラインも内容次第で規定にもなるし、心得えにとどまることもある






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