日本のアニメの危機





評判が悪かった「アニメの殿堂」の建設は中止になりましたが、日本のアニメには他の支援策が必要だという業界関係者は多いようです。1年間に放送されるアニメ番組は2006年に過去最高の306本でしたが、2008年には288本に減少しています。アニメソフトの売上も2005年に971億円あったものが2008年には779億円に減っています。アニメのバブルが崩壊したという声も聞こえてきます
 
もともと日本のアニメーションは子供とその家族が楽しむ内容で、玩具や家電関連会社がスポンサーとなり支援をしていました。それが80年代の 機動戦士ガンダム と90年代の 新世紀エヴァンゲリオン の2本の作品で転機を迎えます。この2作品はストーリーが難解で奥深いものになり、視聴者の年齢が上がり、作品に関連する玩具やビデオなどが爆発的なヒットになりました。アニメは一気に金のなる木になったわけです
 
ここに飛びついたのが深夜の放送枠が余って困っていたテレビ局。深夜に青少年向けのアニメ放送枠を拡大させ、二匹目のドジョウを狙う作戦に出ます。これによりアニメ制作会社には大量の発注が舞い込み始めます。時間に追われることになった制作会社は簡単な制作業務を韓国、中国、東南アジアといった海外へ発注するようになっていきました
 
こうした状況の時、バブル経済が崩壊し不況が長引き、テレビ局は発注コストの切り下げを始めます。アニメ制作における人件費率は80%とも言われ、極めて人件費のウェイトが高いのが特徴です。そのため制作会社はさらに海外への発注度合を高めていきます
 
その結果、アニメーションでは本来新人が担当する動画制作を海外へ依頼するようになり、国内では優秀な動画を描ける人材が育たない状況になりました。これは製造業においてコストダウンのため海外生産の比率が高まり国内の人材が空洞化した現象と同じです
 
そのため動画を描ける腕のよいアニメーターには依頼が集中し、制作現場はさらに疲労感が強まっていきます。これに輪をかけたのがコンピュータの導入です。簡単な動画はコンピュータが描くようになり、人間はコンピュータが描けない複雑なロボットの戦闘シーンのような手間のかかる工程だけを手がけることになりました
 
アニメーションの動画は新人の場合だと1枚当たり100円~200円と言われ、単純なものも複雑なものも1枚の値段は同じです。かつては単純な動画も複雑な動画も一緒にしてこの単価が設定されていました。このため単純な動画が多いアニメ作品は制作者にとって割りのよい仕事でした。しかし、最近では時間のかかる複雑な動画だけをかつての単価で描くことになり、制作現場では徒労感が増しているのです
 
ちなみに、多くのアニメーターは制作会社から仕事を請け負う自営業者です。制作会社がアニメーターを社員として雇用しているのは、スタジオジブリや京都アニメーションなどごくわずかです。そのため労働基準法違反を問えるかどうかは微妙な点があります
 





こうした制作現場を疲労させている原因は 制作委員会方式 にあると主張する関係者もいます。制作委員会方式とは、「風の谷のナウシカ」 や「AKIRA」 により始まったアニメ制作の手法の一つです。テレビ局や広告代理店、制作会社、映画配給会社、出版社、音楽会社、グッズメーカーなどの関係者が出資をして、出来上がった作品の権利、版権を所有します。そして、それらを使い自らのビジネスを展開し利益を挙げる手法です
 
制作委員会方式であれば、多くの資金が集まりやすく、1社単独で制作するよりもリスクを減らすことができます。現在は大作になればなるほど制作委員会方式となっています。制作委員会方式ではテレビ局や出版社、広告代理店が資金的に圧倒的に有利となり、制作会社は事実上下請けとなってしまうことが現場を疲労させているのではないか ・・・
 
だが、これに反論する意見もあります。確かに過去においては制作委員会に問題点はあったが、ここ数年は制作委員会も考え方を変えつつある、というのです。コストダウンのしわ寄せを制作現場に押しつけていると作品のクオリティが下がり販売不振となり、結局投資が回収されないことになることに皆が気づき始めています
 
制作委員会に参加する各社の持ち味、特徴、強みを活かし、各社の弱点を補完し合い、いかに作品の価値を高めていくことができるかが重要になっています。各社の特色を活かし、利害関係を調整し、協力を引き出すことのできるプロデューサーが求められています
 
また、今後日本のアニメーションは制作、販売の両面において海外との共同作業が欠かせません。日本は少子化が進み、国内市場だけでは投資資金が回収できず、次の作品を生み出す投資ができなくなりつつあります。このため海外における制作協力、販売やマーケティング、広告、契約権利関係の交渉・締結ができる人材も必要です。こうしてみるとやはり「アニメの殿堂」 よりも「人」 を育てる支援策や環境整備が求められていると言えそうです






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