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zoom RSS 『時を刻む湖』 7万枚の地層に挑んだ科学者たち

<<   作成日時 : 2016/12/27 06:13   >>

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科学の進展には観察によって長さや量、重さなどを測ることが欠かせない。そのため度量衡と呼ばれるモノを測定するためのモノサシが必要になる。この測定は過去の時間に及ぶことがある。発掘や採取された試料が存在していた年代を明らかにすることで、私たちはいつの時代に何が起こったのか、過去に何があったのかを知ることができる。



現在、発掘採取物の年代を特定する際に利用されるのが 「放射年代測定法」 だ。これは大気中に存在する炭素14という放射性同位体を測定する。炭素14は光合成により植物の体内に取り込まれ、5370年で半減する。この性質を利用し、掘り出した植物の化石から炭素14の量を測定すれば経過した時間がわかる。



だが、この方法には大きな問題がある。大気中の炭素14の量は時代を通じて常に一定とは限らない。元々存在した炭素14の量が年代によって異なれば、測定した炭素14の量がわかっても、何年前なのかを特定することができない。



そこで登場するのが本書で取り上げている福井県・若狭湾近くにある水月湖だ。水月湖の湖底には1年に1ミリずつの厚さで堆積物が沈殿を続け、7万年分に相当する層が年縞と呼ばれる縞模様を形成している。非常に長い期間に渡ってこうした地層が形成され、なおかつ崩れずに保存されるにはいつくかの偶然に近い要因が重なることが必要になる。そのため水月湖は関係者から 「奇跡の湖」 とよばれている。




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時を刻む湖  7万枚の地層に挑んだ科学者たち



1993年、水月湖の湖底の採掘が行われ、45メートルに渡って整然と並んだ縞模様の地層が採取された。この年縞の数を数えれば年代がわかり、それぞれの年縞から植物の化石を取り出し炭素14を測れば、過去の年代と炭素14の量がペアになった換算表が出来上がる。この手法はキャリブレーション(較正)と呼ばれている。



この作業に挑戦したのが、水月湖のボーリングを行った国際日本文化研究センターに所属する若手研究者の北川浩之だ。



だが水月湖から得られた地層のデータは膨大で、もし仮にすべての年縞を分析しようとすれば、7万年分の分析を終えるには20年もの歳月を要してしまう。まして当時の北川は8年という有期雇用で国際日本文化研究センターに採用された立場であり、水月湖の作業に関われば、その間の研究活動は停滞することが予想され、研究者としての将来のキャリアも危ぶまれる。



しかし北川は時間のかかる作業に取り組むことにする。そこにはある挑戦があったからだ。従来、年縞堆積物は過去の環境変遷を復元するために用いられてきた。だが北川は水月湖の堆積物を使って、地質学的な時間を測ることができるモノサシを作ろうと考えた。本書には北川が取り組んだ気の遠くなるような作業の内容が詳しく紹介されている。そして、1998年、北川は論文を完成させ、この論文は雑誌 「サイエンス」 に掲載された。



だが、北川が目指した手法にライバルが登場する。ベネズエラ沿岸の 「カリアコ海盆」 という海底地形の堆積物を使い、キャリブレーションデータを得ようとしたアメリカ人の若手研究者、コンラッド・ヒューエンだ。



北川とヒューエン、水月湖とカリアコ海盆は、どちらがキャリブレーションデータとして、より正確なのかを巡って競り合うことになる。決着をつけるのは研究者たちがキャリブレーションを実行する際に用いるソフトウェアに実装されるデータセット 「IntCal」(イントカル) に採用されるかどうかだ。果たして結果は、そしてこの結果が著者自身の研究者人生にいかに関わって来るのか、これ以上はネタバレになるので、後は本書をお読みいただきたい。



著者によれば、正確なモノサシは世界の誰かが科学技術の限界を一歩先に進めようとする時、人知れず助けをしている。そして、より厳密な定義を求める努力は人類の限界を広げ、限界を広げようとする態度は文明の品格に直接関わっている。




「時を刻む湖」 7万枚の地層に挑んだ科学者たち
中川毅・著 岩波書店・刊 税別1200円






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