人事コンサルタントの徒然草子

アクセスカウンタ

zoom RSS 『ショパン・コンクール』  青柳いづみこ・著

<<   作成日時 : 2016/11/01 18:04   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0


2020年には日本でオリンピックが開催される。4年に1度の晴れ舞台の結果は、選手生命はもとより、その後の人生も大きく左右する。そんな重要な大会の順位の決め方が不透明なら、選手はもちろん、監督、コーチといった関係者もやり切れない。



だがそんな大会が音楽の世界にはある。5年に1度、ポーランドのワルシャワで開かれる ショパン・コンクール だ。年齢制限があるため出場回数が限られる若手のピアニストにとって、このコンクールで入賞することは世界へ羽ばたくチケットを手に入にすることを意味する。



だがショパン・コンクールの入賞基準は、ショパンにふさわしい演奏というだけで具体的なものはない。著者が本書を書くきっかけも、不透明な選考基準がもたらした出来事だった。2010年の大会では、最初の書類選考で落とされたユリアンナ・アヴデーエワが、審査員の一人の猛烈な抗議により大会への出場が認められ、優勝してしまったのだ。



一体、ショパン・コンクールでは何が起こっているのか、著者は実際に自分の目で見て、耳で聴いてみる必要があると感じ、ショパン・コンクールに赴くことにした。本書は2015年のショパン・コンクールの模様を、春の予備選から秋の本選までの全工程を振り返りながら、コンクールのあり方、ショパン音楽の本質と解釈の多様性、ピアノ教育の役割、今後の指針などをまとめたものだ。


画像

ショパン・コンクール  最高峰の舞台を読み解く




2015年のショパン・コンクールの応募者は約450名、最初の書類・DVDによる事前選考で、約3分の1にまで絞られる。その後、春に予備選が行われ、秋の本選では1次〜3次の予選があり、決勝のグランド・ファイナルを迎える。読者は著者の手により、この事前選考から決勝までの模様をつぶさに目にすることができ、次々と登場する競技者たちの演奏に書面を通じて触れることができる。競技者の演奏だけでなく、ショパン・コンクールの歴史や、対立する2つの流派の動向、審査員や競技者本人への取材やインタビューも紹介されている。巻末の索引には本書に登場するピアニストが網羅されている。



著者は大阪音楽大学の教授としてピアノを教える立場にあるため、競技者の演奏の描写が詳細なのが印象的だ。奏法技術、指の運び、ペダル操作、音の表現、スコアの解釈、スピードの強弱、使われるピアノなど、演奏家としての目のつけどころが丹念に描かれている。



例えば、日本人ピアニストとして10年ぶりに決勝に進んだ小林愛美を評して、極端な前傾姿勢で体重をかけフォルテを出す奏法は指の第3関節が育たず楽器がきちんと鳴らない、メロディを歌う短音が淡雪のように溶けてしまう、決勝のピアノ協奏曲1番では、冒頭の和音から音楽に入り込み、音もよくのびて歌い、艶はないものの色も変わる、第2楽章はリリシズムに満ちた演奏で聞かせるが、第3楽章に入ると左手のリズムの刻みが甘く、躍動感に欠け、音も痩せてくる、今後は天性のバネに加え芯のある音づくりが求められる、といった具合だ。



Aimi Kobayashi,Final Stage of the Chopin Competition 2015

https://youtu.be/u3pwP8eZCmI




残念ながら、これまでのショパン・コンクールで日本人の優勝者はいない。なぜ、日本人は勝てないのか、本書はその理由にも迫る。著者によれば教育システムが整い、技術面でピアニスト同士の差はほとんどなくなり、世界中でコンクルールの相対性が高まり、絶対的な王者はいない状態にあるという。



ショパン・コンクールが終わり、著者は日本で審査員を務めたイギリス人の音楽学者の講演に触れ、ショパン・コンクールの本来あるべき姿を見出すことになる。それは楽譜に書かれたことを盲目的に信じるのではなく、ショパンの即興精神を汲み取り、たえず姿を変える流動的な音楽であることを念頭に読み解くことだ。



次回のショパン・コンクールは日本でのオリンピックの年と重なる。オリンピックが終わってほどなく、ワルシャワから日本人初の受賞者の吉報がもたらされるかもしれない。




「ショパン・コンクール」  最高峰の舞台を読み解く
青柳いづみこ著  中公新書刊 税別880円




ブログ・トップページ : http://justeye.at.webry.info/




テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『ショパン・コンクール』  青柳いづみこ・著 人事コンサルタントの徒然草子/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる