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zoom RSS 『トウガラシの世界史』  山本紀夫・著

<<   作成日時 : 2016/06/13 04:30   >>

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私たちが普段口にする香辛料の中で世界を席巻しているのが胡椒と唐辛子だ。胡椒はコショウ科コショウ属の植物で、他に絡むという 「つる性」 があり、熱帯低地でしか生育しない。一方、唐辛子はアメリカ大陸が原産地のナス科の植物で、温帯地域でも栽培され、品種改良によりピーマンやパプリカといった野菜としても食される。両者は全く異なる植物だが、唯一の共通点はその辛さにある。



著者がトウガラシと深く関わることになったきっかけは、学生時代にアンデス栽培植物調査隊の一員として派遣された南米・ボリビアでの出来事だった。市場に見たことがない小さな緑色をした果実が売られていた。試食してみると非常に辛く、野生種のトウガラシだった。すでにトウガラシは栽培化されており、普通、人間は植物を栽培化するとその原種である野生種は利用しない。だが、ボリビアでは野生のトウガラシが売られていた。なぜ品質にバラツキが大きく、果実が脱落するため収穫に手間のかかる野生種のトウガラシが食されているのか、この疑問が著者がトウガラシと人間との関係について研究する嚆矢になった。



本書はトウガラシがどこで生まれ、どのような経路で世界に広がり、どのように利用されているのかという疑問に答える。そして、主食の陰に隠れて目立たないトウガラシに光をあて、世界の食文化に果たしている役割を明らかにする。



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トウガラシの世界史
 〜辛くて熱い 「食卓革命」



最初に植物としての歴史や特徴が解説される。トウガラシは紀元前8000年〜7500年頃には、中南米で利用されていたという長い歴史を持つ。それが1492年、コロンブスによる新大陸の発見により、珍しい植物の一つとしてヨーロッパへ持ち込まれる。大航海時代という経済活動のグローバル化の波に乗って、陸路や海路を経てトウガラシは世界中に広がってゆく。



本書では世界の地域ごとにトウガラシが伝わってきた経路が明らかにされる。取り上げられる地域はヨーロッパ、アフリカ、南アジア・東南アジア、中国、韓国、そして日本だ。それぞれの国で、トウガラシがどのように食され、利用されているかを、著者が自ら足を運び味わった現地料理の数々を通じて紹介してゆく。滅多に見聞きすることがない国のトウガラシを使った料理も登場する。香辛料・スパイスの一種として利用されることもあれば、中にはトウガラシそのものを味わうという国もある。



トウガラシは世界中に広まったが、同じ国や地域でも利用の濃淡に大きな差がある。例えばヨーロッパではイタリアでは盛んに利用されるが、その他の国や地域ではほとんど利用されない。中国では麻婆豆腐に代表される四川料理が出される四川省を中心にした西南地域では盛んに利用されるが、それ以外ではあまり見かけることがない。インドネシアでは、インドに近い西部のスマトラ、ジャワ、バリといった地域では料理に欠かせないが、東へ行くほど使われなくなる。こうした背景には歴史や食文化、気候風土、地理的な状況などが関係している。



トウガラシが日本に到来したのは諸説があるが最も早いものとしては、コロンブスが新大陸を発見したわずか50年後という記録がある (草木六部耕種法 佐藤信淵・著)。これは当時の物流事情を考慮すると、とてつもない早さと言え、この説が正しければ中国や韓国よりも早く持ち込まれたことになる。



江戸時代に入ると、トウガラシは薬や園芸植物としての利用されるようになる。そして、現在にも通じる薬味としての利用が始まる。うどんの薬味としては胡椒が使われていたが、あっさりしたカツオブシを使ったダシが用いられるようになり、トウガラシが薬味の主役に躍り出る。さらにソバが食されるようになったことが薬味としてのトウガラシの地位を不動のものにした。



人間の国や地域を超えた移動が盛んになるに連れ、食文化の多様性が進み、トウガラシの利用にも変化が生じている。お隣の韓国では若者を中心にキムチ離れが著しい一方、日本では焼肉チェーン店の台頭で、漬物の生産量の1位がキムチになっている。世界地図が真っ赤に塗りつぶされるまでトウガラシの快進撃は止まらないようだ。




「トウガラシの世界史」 辛くて熱い「食卓革命」
山本紀夫・著 中公新書 税別860円




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