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zoom RSS 『世阿弥の世界』  増田正造・著

<<   作成日時 : 2016/03/26 11:03   >>

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日本の古典芸能は数あれど、最も敷居が高いのは能だろう。だがそんな能も源流を辿れば、私たちに身近な存在に数多く出会える。例えば、「神楽」(かぐら)もその一つだ。面をつけ、笛や太鼓に合わせて舞う姿は能と瓜二つだ。また、僧侶がお経を唱える声明(しょうみょう)と舞踏、散楽(さんがく)とよばれる一種の大道芸も能の源流とされる。



これらが合わさったのが能の発祥と言われる 「申楽」(さるがく) であり、これを能という 「極北の演劇」 にまで昇華させたのが世阿弥だ。一方、世阿弥によって能は、それまでの庶民の身近な娯楽から、時の政治権力へ接近することになる。その結果、世阿弥は佐渡へ流されてしまう。



本書は世阿弥と能の入門書だが、教科書的な世阿弥の解説本ではなく、教養として能を修得する本でもない。著者の体験から生じた能への思い、世阿弥の現在における意味、まだまだわからないことが多い疑問の数々が書き綴られている。著者の見方だけでなく、作家や思想家、哲学者、学術研究者など多彩な人々による見解も取り上げられ、関係する本も数多く紹介されている。巻末には主な能の作品の紹介や、世阿弥が記した伝書の一覧、能の用語解説が添えられている。



画像

世阿弥の世界




本書の構成は大きく分けて、次のようになっている。第2章・「風の巻」 では能と世阿弥についての基本的な事項のおさらいがされる。能という演劇の特徴、能の流派と演目、能と政治権力との関係、修羅能と夢幻能、序破急などが取り上げられる。そして、世阿弥が重視した本説(=作品の拠り所となる物語、漢詩、故事、言い伝えなど)に基づく作品の傑作とされる 井筒 と、「作り能」 の頂点を極めた (きぬた) のストーリーと見所が謡(うたい)と伴に詳しく解説される。演者が表現したいことを、いかに表現せずに伝えるかという能の本質がわかる。



「姿の巻」 では演劇としての能について語られ、用いられる面(おもて)や動き、舞、装束、扇、謡、能舞台、楽器、狂言などが取り上げられる。「花の巻」 は世阿弥の伝書から、さまざまな世阿弥語録が紹介される。お馴染みの「秘すれば花」や「初心忘れるべからず」、「離見の見」の意味や、世阿弥理論の3本柱とされる 「花」「幽玄」「物まね」(=写実) の内容を知ることができる。世阿弥の伝書は今や能学論にとどまらず、演劇論、芸術論、教育論、人生論へと射程を広げている。



「伝の巻」 は世阿弥の生涯が取り上げられる。栄光と没落、嫡子・元雅との不和、能学史上に大きな衝撃を与えた「上嶋家文書」の内容、佐渡への配流の謎や疑問が取り上げられる。第3章は現在に受け継がれる世阿弥について触れられ、能研究の最前線、武道と能との関係、新作能、世阿弥の再来と言われた観世寿夫(ひさお)と著者の交流などが描かれている。



著者は能と世阿弥については、まだまだわかないことが多く、その原因は政治的な理由から多くの関係資料が葬られたためではないかと語る。今後、新たな古文書が発見されれば、世阿弥は再び甦り、私たちの前に新たな 「夢幻能」 が披露されるかもしれない。



「世阿弥の世界」  増田正造・著
集英社新書・刊 税別760円






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