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昔の手帳や、使わなくなった携帯電話を大事に残してい る人がいます。手帳には過去の行動の記録が綴られ、 携帯電話には交わしたメールが思い出として残っている からでしょう 夜も更けて、何気なくそれらを手にすると、過去の自分と 出会うことができます。徒然草 第29段「静かに思えば」 は、兼好法師もそんな場面に遭遇したというお話です ◇ しずかに思えば よろずに過ぎにしかたの --------------------------------- 心静かに思えば、すべて過ぎ去ったことの 恋しさのみぞ せんかたなき ------------------------ 恋しさほど、悲しいものはない 人しずまりて後 長き夜のすさびに ----------------------------- 人が寝静まった後、長い夜の慰めに なにとなき具足 とりしたため ----------------------- 身の回りの品々をかたづけ 残しおかじと思う反古(ほうご)など 破り捨つる中に ---------------------------------------------- 残しておこうとも思わない不要な紙などを、破り捨てていると なき人の手ならい 絵かきすさびたる 見出でたるこそ -------------------------------------------- 亡くなった人が字を書き習い、気の向くまま描いた絵を、 見つけ出したのは ただその折の心地すれ --------------------------- ただただ、その当時の心地がする このごろある人の文だに 久しくなりて --------------------------------- 存命している人の手紙にしても、時が経ち いかなる折 いつの年なりけんと思うは あわれなるぞかし ---------------------------------------------- いつの頃のものだったのかと思うのは、感慨深いもの 手なれし具足なども 心もなくて 変らず久しき いとかなし ------------------------------------------------ 故人の身近な調度品なども、亡き人同様心が感じられないで、 変らないままなのは、とても悲しいものである 引越しや転勤で身の回りの品々を整理していると、思い がけないものが見つかり、懐かしく過去がよみがえるこ とがあります。身内が亡くなったあとの遺族たちも同じ ことでしょう 命あるものは必ず滅するが、思い出の品はいつまでも 変らずにあります。時がさらに経過すると、思い出の品 を知っている人もいなくなります。そうなると思い出の品 も、かつてほど大切にされなくなります 生けるものも、そうでないものも、最後には同じ末路を 辿ることになります |
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